医療法人社団 健友会 中野共立病院中野共立診療所
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しんぶん健友
第17号(2003年7月10日)



元従軍看護婦 肥後喜久恵さんを訪ねて

 ことしも八月一五日がやってきます。五八年前(一九四五年)のこの日を、戦地で迎えた人はどのくらいいたのでしょうか。軍医として、従軍看護婦として戦争に参加し、戦後、日本に帰ってから民医連(民主医療機関連合会)の病院や診療所で地域医療に献身した方々は、いま、どうしておられるでしょうか。少なからぬ方が、退職後の日々を「歴史の語り部」として、「継承者」として、若い後輩たちに語り伝える活動にかかわっていると聞きます。
 そんなお一人である肥後喜久恵さん(79)を、中野共立病院四階病棟の看護師・佐藤典子さん(26)が埼玉県鶴ヶ島市の自宅に訪問しました。
(肥後喜久恵さん:長野県出身。日赤看護学校卒。在職中は全日本民医連の理事・看護委員として活躍した。)


 肥後さんのお住まいは、池袋から東武東上線の急行で四〇分の鶴ヶ島駅近くにあります。閑静なマンションに、ご主人と二人で静かに暮らしておられます。きれいに片づけられた部屋のあちこちに、得意のレース編みや縫い物がさりげなく置かれた快適な空間で、熱っぽい話を三時間以上もお聞きしました。

 肥後さんは長野県伊那谷の生まれ。「お国のために役に立つように」という母の意志を受け、女学校卒業後、日赤看護学校に入学。一九四四年(昭和19)に召集令状を受け、従軍看護婦として中国へ渡り、興城陸軍病院で働きました。そこで終戦を迎え、朝鮮半島を通って日本へ帰る途中、八路軍に武装解除され、八路軍総司令部衛生課に連れて行かれました。
 八路軍は蒋介石率いる国民党軍とたたかって勝利し、中国人民を解放する土地改革を行いましたが、肥後さんはそこで一三年間看護婦をしながら思想教育を受けました。

 戦場では医療材料も薬品もほとんどなく、負傷し、息絶える患者が何千人、何百人と運ばれてきて、肥後さんは必死に何かできることはないかと考えて看護にたずさわりました。その人たちを前に、まず自分ができることはただそばについていることだけだった、と肥後さんは語ります。
 家族と離ればなれになり、孤独と不安に怯えながら生きようとしている患者さんにとって、肥後さんのような看護婦の存在はどんなに心の支えとなっただろう…。
 そんな肥後さんが日本へ引き揚げてきたのは、一九五八年(昭和33)七月のこと。三四歳で、妊娠七カ月の身重でした。
 「日本に帰ったら、戦争に反対する病院に勤めたかった」という肥後さんは、みずから民医連の代々木病院を訪ね、就職。それから二四年間、仕事を通して民医連の看護の考え方をつくり上げ、看護婦を育てる活動にとりくみました。
 一九六五年(昭和40)、代々木病院付属准看学院が開設されると、教務主任に就任し、看護婦養成に力を注いだのです。

 私は、今回はじめて戦争を体験した看護婦さんの話を聞かせていただきました。肥後さんの話は、現代最新医療の現場で働く私にとっては想像もつかないほど過酷で、衝撃的でした。
 いまでは豊かな世の中となり、新しいものへとつぎつぎと変貌し、物や機械に頼る世代となっています。しかし、私たちが忘れてはならないことは、肥後さんのように、戦争の時代に貧しく自由もなく青春時代を戦場で過ごし、自分の職務を全うしてきた人たちがいるということ。大勢の人たちの命が失われ、悲しみや苦痛の叫びとして、いまでも鮮明に残されているということ。その真実を、若い世代の私たちが受けついでいかなければならないということです。
 私は看護師になって五年。最新の医療の中で、安全や感染対策の面でも、マニュアルにもとづきながら業務しています。私が学生時代に学び、基本としていた看護計画と、肥後さんたち民医連の看護婦さんたちが考えた看護計画に違いがあることを知り、ビックリしました。肥後さんたちは看護計画の立て方を比較検討し、看護の質の向上を長年にわたり研究してきたそうです。
 まだまだ未熟な私は、肥後さんの話を聞きながらさまざまなことを考えさせられました。昔も今も患者さんを看るという私たちの仕事はなにも変わらない。大切なことは、身体のケアを十分観察し、援助をしていても、心のケアを決して怠ってはいけないということでした。身体と心を一つとして看ていかなければいけないということをあらためて実感しました。
 肥後さんの話をこれからの生活や仕事に生かし、がんばっていきたいと思います。


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